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5-2.目木バス停→大庭→久世宿→久世駅
真庭東部エリア [この区間の地図]
<5-1.美作追分駅→目木BS 5-3.久世駅→勝山宿→中国勝山駅>
目木から久世までの間では一直線に久世市街を目指す国道に対し、旧街道は南に大きく迂回する表街道、北の丘陵を通る脇街道に分かれます。この先、表街道を選択してご紹介しますが、平成27年(2015)11月に開催された「第5回出雲街道を歩こう会」では両方を歩いていますので、そちらもご覧ください。
表街道は目木川を渡る手前で左折して進路を南に変えて国道をくぐり、次いで目木川の堤防に上がります。正面には中世に山城が築かれていた笹向山がよく見えます。旧街道は南東の山沿いに向かっていたそうですが、この付近では目木川の改修や圃場の整備、真庭産業団地(南区域)の造成といった要因によって道筋が消失しているので、写真3002の地点まで堤防を進んでから左折して三崎地区の集落へ向かいます。

3001.堤防を南下

3002.ここまで行って左折
県道330号を横断すると三崎の集落内に入ります。先述のように、三崎地区では旧街道は南東の山沿いを通っていたそうで、集落内では旧街道の道筋と思われる細道も見られますが、通り抜けはできません。先に進むには写真3004の地点を右折し、また県道に戻ることになります。

3003.県道330号を横断して集落内へ

3004.ここで右折
県道に戻る地点には移設されてきたという雰囲気の大きな地神と題目塔があり、そこから圃場整備の済んだ田園の中を行く県道を西進します。やはり南の山沿いに旧街道の道筋と見て間違いのない道が見えますが、ここも通り抜けはできず、現在も農作業に用いられていると思われるごく一部分にその面影を残すのみです。

3005.右折ですが…

3006.南に旧街道らしき道筋が見える
●ホウキ鼻
三崎地区から大庭地区の境では南の山が削られているのが見えます。この山はかつて目木川の寸前まで突きだしていて、ホウキ鼻と呼ばれるちょっとした難所でした。現在では県道330号の改良も完成し、ここが地域の境界線であるとは知らないと気づけないような状態になっていますが、平成の合併前までは三崎地区が旧久世町、大庭地区が旧落合町と、別々の自治体に属しており、かつてはこのホウキ鼻が壁のようになっていたことが想像できます。

3007.削られたホウキ鼻
ホウキ鼻を過ぎた先で斜め左に進んで大庭の集落へ入っていきます。県道330号との間には「町頭」という標柱が見え、この先、大庭の集落内で流れている水路もこの近くから始まっています。大庭では地元の皆様によりこのような標柱が多数建てられ、旧街道時代の街の姿が想像できるようにしてくださっています。

3008.斜め左へ

3009.大庭の町頭

3010.屋号等を記した標柱
●大庭
美作国西部を占める真庭市は主として真庭郡の町村が合併して誕生した市ですが、「真庭」という地名は真庭郡成立以前に存在した旭川西岸の「真嶋郡」と東岸の「大庭郡」の合成地名です。その一方である「大庭」を名乗るこの地区は、笹向山には大規模な山城、その麓には法光寺や廃寺となった妙蓮寺という寺院もある場所で、交通面でも集会所に保存された道標が示すように、東西方向の出雲街道と、南の落合、岡山方面の道が交差する地でもありました。近世になると出雲街道の宿駅となった久世が大きく発展することになりましたが、それ以前には美作国西部でもトップクラスの要衝の地として繁栄していたと想像させてくれます。

3011.移設された道標

3012.法光寺

3013.妙蓮寺跡のラン塔
>拡大画像 「城下町」大庭の里の案内板
●首なし地蔵
大庭の集落を出たところでは、北側の田園の中に地蔵がとてもよく目立っています。首がなくなってしまっていますが、一般的な街道沿いの地蔵より大きな立像で、とても丁寧に造られている印象があります。

3014.首なし地蔵
写真3015の地点で道は左にカーブしますが、左は落合方面への道、道が狭くなる直進が県道330号の旧道で、ここは直進します。久しぶりに姫新線と出会う大日踏切は踏切を挟んだ十字路のような形になっており、ここは右折します。踏切の西には牛馬繁栄塚と、地元の名士と思われる金平善十郎翁之碑があります。先述した大庭の集会所のところにあった道標も、この辺りに置いて向きを直せば「右 久世 かつやま道 左 津山 大坂 (南に)岡山 落合」となって矛盾がなくなります。

3015.ここは直進

3016.大日踏切を渡る

3017.牛馬繁栄塚

大日踏切を渡ると県道330号を横断、次いで県道329号の旧道と合流、さらに紫雲寺橋の南で右折して県道329号に入り、目木川を渡ります。市街地でもないのに交差点が連続するのは近年の県道329号及び県道330号の改良の結果ですが、出雲街道は交差点付近で微妙に形状を変えているだけで、旧来の道筋に大きな変化はありません。紫雲寺橋も先代の橋が少し上流側にあったことがわかる道路形状になっています。

3018.県道329号の旧道へ

3019.右折して紫雲寺橋を渡る
目木川を渡れば再び旧久世町の中島地区に入ります。すぐ東側は旧落合町の大庭地区で、目木川という明確な境界線があるにも関わらず、その北岸にも旧落合町の大庭地区が飛地のように存在しているのは何らかの歴史的経緯があるのでしょう。私の推測にはなりますが、中島という地名や、目木川が旭川に合流する地点にも近いことから、かつては川の流れが現在とは違う形だったのかもしれません。旧街道は旭川の堤防に上がる道筋もありましたが、歩道もない堤防道路となるので、写真3021の地点で鋭角に右折して旭川から少し距離を置いて北上します。

3020.中島地区内

3021.堤防が見えたら右折
中島の次は土居集落で、集落の中心近くに千手観音堂があります。続く下原地区でも常夜燈や地神、塞の神が見られ、この道も堤防の旧街道と並んで、古くから利用されてきた道だとわかります。

3022.土居の千手観音堂

3023.下原の常夜燈、地神、塞の神
写真3024の地点では左の道へ進み、300mほどで旭川の堤防を通ってきた県道329号と交差し、南東から真庭市役所へ入っていきます。

3024.ここは左

3025.真庭市役所の南東側へ
●真庭市役所
真庭市は9つの町村の合併で生まれた県内最大の面積を持つ都市ですが、その多くを山林が占める過疎地域でもあります。久世に建設された新しい市役所は、9本の木柱に支えられたエントランス、そして地場の木材によりエネルギーを得て庁舎内の冷暖房を行っているエネルギー棟が印象的です。また、バスの待合所は、木の板を直角に組み合わせたCLTという建材を採用した日本初の建築物で、この小さな待合所が真庭市の主産品である木材の大きな可能性をアピールしています。

3026.真庭市役所

3027.エネルギー棟で資源の循環

3028.CLTのバス待合所
>拡大画像 CLTの案内板
●旧遷喬尋常小学校
真庭市役所前の交差点の西北にある旧遷喬尋常小学校の校舎は、国の重要文化財に指定されているほどの学校建築で、内部が一般公開されているだけでなく、休日には様々なイベントも開催されています。美作国の出雲街道沿いでは「誠道小学校」「喬松小学校」など、小学校の名前が地名ではなく教育に対する理念を表しているケースが多く、この遷喬小学校は幕末から明治にかけての政治家そして教育者として活躍した山田方谷が、中国の古典「詩経」から引用して命名したものです。

3029.旧遷喬尋常小学校
>拡大画像 旧遷喬尋常小学校の案内板
真庭市役所の西、旭川と国道に挟まれた一帯が久世市街で、その中央を東西に貫く道路が旧国道ですが、旧街道の道筋は天神橋までの間、旧国道の南を通っています。

3030.天神橋までは裏道

3031.天神橋から久世宿へ
●久世宿
華蔵庵の松がある天神橋から西が古くからの久世宿の街並みです。平成の大合併前の「町」では珍しいアーケードの商店街が部分的に登場し、多くの旅館が健在なのも目を引きます。最近では地方で生き残るレトロ商店街としてじわじわと人気が高まりつつあるところですが、旭川の北岸の国道181号、南岸の国道313号沿いにはそれぞれロードサイド型の店舗も立ち並び、国道313号沿いには真新しいビジネスホテルもあるなど、決して久世の繁栄は過去のものではなく、今も昔もその都市機能は変わらず、真庭市内で最も商業の盛んな町だと言えます。

3032.天神橋と華蔵庵の松

3033.レトロなアーケード商店街

3034.秋にはだんじり祭も(準備中の撮影)
>拡大画像 華蔵庵の松の案内板
●久世代官所跡
商店街から北の久世駅へ出る通りは早川町通りと呼ばれますが、そこには久世代官所跡があり、その北に隣接する重願寺の山門はかつての代官所の門です。久世は江戸時代の多くの時期において天領となっており、像が立てられている早川八郎左衛門正紀のような名代官も現れたこともあって、独自の発展を遂げてきました。また、同じく久世の独自性と言えば、岡山県内で最大の牛馬市が開かれていたことも挙げられ、重願寺には牛の像があります。

3035.代官所跡に立つ早川代官の像

3036.重願寺の門

3037.重願寺の牛の像
>拡大画像 久世陣屋跡の案内板
>拡大画像 早川八郎左衛門正紀の案内板
令和6年(2024)に開業100周年を迎えた久世駅は古い駅舎を持つ駅ですが、駅舎の東に隣接するトイレと一時駐輪場は、平成29年(2017)に新築されたCLT建築の「木テラス」です。CLT建築の第二弾は、バス待合所より大きく複雑な建築物で、ヨーロッパでは高層建築物にも使用されているというCLTの日本での実用化に向けて一歩進化しています。これまでご紹介してきた市役所の冷暖房システム、バス待合所、真庭産業団地のバイオマス発電所、そしてこの木テラスと、久世の地では、新時代を見据えた真庭市の取り組みが続々と進行中です。

3038.久世駅

3029.木テラス
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