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屏風岩鶴嘴山里公園ハイキング(平成28年2月6日)
平成27年度冬版の「JRふれあいハイキング」(京阪神版)のパンフレットに觜崎を歩くハイキングのイベントを見つけました。JRのパンフレットで何十万人もの目に止まるうえ、姫新線(=大量交通機関)の利用促進を兼ねたイベントなので、非常に多くの参加者が見込まれます。私自身、少人数でアットホームな雰囲気を好むうえ、大人数の中でガイドをしてくださる方の話をちゃんと聞けるか不安もありましたが、出雲街道を歩き始めた初日には、恥ずかしながら觜崎宿の場所すらわかっていなかったという苦手の区間なので、こういう機会は見逃さず参加です。なお、このハイキングは、本編では「2.飾西から觜崎へ」の終盤の部分に該当しています。
当日は朝からJRの列車を乗り継いで東觜崎へ。姫路からの姫新線の列車は2両編成の座席がほぼすべて埋まるくらいの乗車率で、その約半数がこのイベントの参加者という感じでした。そして本竜野駅からはさらに多くの参加者が乗車してきます。普段は無人駅である東觜崎駅にも2人のJR社員が改札に立っていました。そして受付を済ませて資料をいただき、説明を受けて出発します。参加者数は約250人という大人数で、これまで参加した街道歩きのイベントとは異なり、小学生の姿も多く見られました。
なお、このイベントの主催は「姫新線利用促進・活性化同盟会」ですが、共催として地元の「神岡地区連合自治会」「スポーツクラブ21神岡」、そしてたつの市で様々なウォーキングイベントを開催されている「たつの市ドラゴンウォーカーズ」の皆様がサポートしてくださっています。

7301.東觜崎駅前に集まる人、人、人

7302.「地域の足」の活性化のために

7303.まずは觜崎宿へスタート

7304.脇本陣の前を通る
東觜崎駅北方の踏切を渡り、觜崎宿に入ります。この最初の行程が私にとってはメインなので、ガイドをしてくださっている方の声が聞こえる位置をキープします。写真の門は脇本陣で、宿場町当時の姿が健在です。本編にも掲載した「民家の中の鳥居」は、本陣にあった「道久稲荷明神」で、本陣そのものは失われていますが、本陣を務めた家の子孫が守り続けているものだそうです。それにしても、この大人数で宿場町を行くと、まさに大名行列のようです。
「寝釈迦の渡し」跡に至る直前で南へ分岐する道は古来からの室津方面への道だそうです。街道の道筋からは外れていますが、室津は古い歴史を持つ西播磨の港町で、出雲街道がメインの交通路であった時代にもこの道を利用して多くの人や物資が室津に向かっていたことは想像に難くありません。続いて「寝釈迦の渡し」、そして「觜崎の磨崖仏」に立ち寄りガイドを受けます。

7305.室津への街道

7306.寝釈迦の渡し跡

7307.觜崎の磨崖仏
続いて少し東にある登り口から鶴嘴山へ登ります。山頂へ向けて急坂を上っていきますが、一般的な山道と違って岩が露出している上を歩く場所が多いので滑りやすく、しかも万一派手に転倒しようものなら、絶壁から転落(というより墜落)しかねませんので、十分な注意が必要です。これに備えて最初に竹の杖が配られており、この大人数なのでゆっくりゆっくりと進んでいきます。余談ですが、この付近では「たつの市ドラゴンウォーカーズ」のメンバーと一緒に歩いていたので、その会話の中から、これまで十分に理解できていなかった觜崎から千本にかけての旧街道のルートなどを教わることができました。

7308.ここから左へ

7309.姫新線のトンネルの上

7310.どんどん上ります

7311.山頂は近い
鶴嘴山の山頂は標高168m。もちろんここが「觜崎の屏風岩」の「上」なのですが、これは柔らかい地質の山の中で柱のようになっていた硬い岩盤が、長年の風化浸食の末に取り残されたものだそうです。専門的には「柱状節理」と呼ばれているそうですが、ここまで典型的な姿のものは珍しく、地質学的にも貴重なものらしいです。そして周囲の眺望も見事です。

7312.さらに登りました

7313.山頂で一休み
>拡大画像 觜崎の屏風岩の案内板

7314.岩の尾根筋を歩く
鶴嘴山からさらに北の尾根筋を行き、途中で東に方向を変えて下っていきます。繰り返しになりますが、とても滑りやすいので、もし訪れる際には細心の注意を払ってください。杖を持つのはもちろんですが、今回のハイキングでは場所によっては「カニ歩き」が推奨されました。そして觜崎の東方にある大住寺地区に出てきます。

7315.東に向きを変えて下る

7316.大住寺地区で山道終了
>拡大画像 大源寺 鶴嘴山里公園の案内板
大住寺地区は、「大住寺群集墳」と呼ばれる古墳群があります。その中を通り抜けていき、野森稲荷神社のすぐ東から南に入っていきます。

7317.野森稲荷神社

7318.ここを南へ

7319.大住寺皿池
この付近にある「皿池」「奥池」は、「大住寺湿地植物群生地」として貴重な動植物が見られます。季節的な問題もあると思われるので、それらを間近に見ることはできませんでしたが、皿池では地元のメンバーが待機しており、その写真を見せていただけました。
そして「そうめんの里」「素麺神社」に出てきます。ここは本編でも触れているうえ、ガイドをされている方々と離れてしまっていて新しいネタが入ってこなかったので省略させていただきますが、この日の最後に配布された記念品は素麺の「バチ」で、やはり觜崎と素麺は切っても切れない関係です。

7320.そうめんの里の横を通って

7321.素麺神社へ
素麺神社からは街道の道筋より南側を通って駅に戻ります。駅前の空き地では、「神岡地区連合自治会」の皆様がテントを立て、豚汁を振る舞ってくれました。寿司や野菜なども販売されており、ちょっとしたお祭の雰囲気です。ここで昼食をいただき、解散となります。

7322.お堂のある辻を曲がる

7323.東觜崎駅でゴール

7324.ICカード導入はもうすぐ
今回はいわゆる街道歩きのイベントではありませんでしたが、それでも多くの成果がありました。冒頭に触れた「不安」は杞憂に終わり、觜崎宿についての知識が深められたのはもちろん、道すがら「たつの市ドラゴンウォーカーズ」のメンバーの方にたつの市内の旧街道について色々と教えていただけ、最後には「たつの市ドラゴンウォーカーズ」代表(?)の方ともお話ができました。このイベントは半日で終了なのですが、ここで教わった知識を生かすべく、午後は新宮までもう一足伸ばしてきました。

今回感じた地域のパワーは「連携」です。主催・共催の4団体はそれぞれ違う立場で活動されていますが、この日のイベントではそれぞれの得意分野でイベントに携わっておられるように見えました。例えば、地域のグループだけでは県内/県外、そして老若男女問わず、これだけの人数を動員することはできなかったでしょうし、地元のスポーツクラブやウォーキンググループなしでは、コースにおけるガイドや安全性の確保が十分にできなかったでしょう。地域で志を持って活動している人達の力、それぞれ個別でも力強いものがありますが、その人達が連携して力を結集すれば、さらにすごい力になるということを実感させてくれました。

そして最後に触れておきたいのが姫新線のことです。兵庫県内の姫新線では平成18年度から「輸送改善事業」が行われました。詳しくは「姫新線利用促進・活性化同盟会」の公式サイトで確認できますが、その成果により、少なくとも姫路〜播磨新宮は都市鉄道と比較してもさほど遜色のないレベルになっています。そしてこの3月のダイヤ改正からはICOCAなどの交通系ICカードも播磨高岡〜播磨新宮で利用可能になります。
しかし、これはJRが一方的にしてくれたものではありません。JRはただ「陳情・要望」をするだけでは地方交通線(赤字部門)に投資はしてくれません。兵庫県内の姫新線沿線では、自治体がこの事業の資金を出すだけでなく、このようなイベントを企画するなどして利用促進に努め、また、沿線住民も募金活動で資金の一部を供出し、このようなイベントにも有形無形の協力をされているからこそ、JRという大企業を動かし、鉄道という巨大な社会基盤を変えたと言えるのです。
その結果、地方のローカル線としては珍しく、兵庫県内の姫新線は利用者数を増やしています。この日のイベントの最初にたつの市の企画課長が挨拶の中で「V字回復」という言葉を口にされました。姫新線利用促進・活性化同盟会では(年間の利用者数について)「チャレンジ300万人」を合言葉にしていますが、一時は「210万人」まで落ち込んでいたものが、沿線人口の減少という難局を迎える中で「300万人」に手が届きそうなところまで増加しているそうです。今年(2016年)は姫新線全通80周年という記念すべき年です。歴史の中で出雲街道の半分を引き継いだ姫新線が「300万人」を達成できるよう、私も姫新線を利用するとともに、姫新線を利用して実際に出雲街道を歩く人が増えるようなサイト作りを心がけ、微力ながら地域の力になりたいと思いました。

平成27年度、兵庫県内の姫新線は「300万人」を達成しました!おめでとうございます!
そして今後もそれを維持し、ますます発展していけるよう、お祈り申し上げます。
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